令和6年11月6日、公益財団法人不動産流通推進センター 副理事長 田尻 直人様に
当協会からの提言を手渡しました。
本提言は、当協会が公益財団法人 不動産流通推進センターに対して行う形をとります。
不動産流通推進センターに対するFRP提言
私たち一般社団法人不動産流通プロフェッショナル協会は、貴センターが認定した公認不動産コンサルティングマスター・宅建マイスターの有資格者および同等の資質、姿勢を持つ有志による団体であり、自らの研鑽により他の模範となるよう努力するとともに、貴センターへの提言等を行うことにより、不動産流通業界を更に正しく発展させる一助となることを目的としております。本提言はその理念に基づき行うものです。
1.公認 不動産コンサルティングマスターと空き家対策
このたび、国土交通省から発表された「不動産業による空き家対策推進プログラム」において、媒介業務と別個の不動産コンサルティング業務の再認識、および公認 不動産コンサルティングマスターの活用が明示され、かつ国土交通省から地方自治体に対し、公認不動産コンサルティングマスターの紹介、活用依頼がなされたとのこと、貴センターの尽力が実りご同慶の至りです。
地方自治体と公認不動産コンサルティングマスターとの関わりについては、その業務が営利以外に、地方自治体とのつながり、知名度アップ等のメリットを感じるプレイヤーが自主的に行うものですが、「〇〇市・空き家対策相談員」といった士業による地域貢献活動的な性格の呼称を得ることにより、一般の公認不動産コンサルティングマスターおよび不動産業者と区別する必要があると考えます。これについても国土交通省から地方自治体に対して働きかけていただく必要があるのではないでしょうか。
さらに、不動産エバリュエーション専門士資格者は、貴センターの実施している資格制度の中で最高峰であり、貴センターとして推薦できる人材である旨を告知していくことが必要と考えます。
また、上記「相談員」は、3項で述べる行動規範、行動宣言を遵守することで、より高い信頼性が確保できると考えます。
2.宅建マイスターを宅地建物取引士リーダーへ
宅地建物取引士(以下「宅建士」という)のリーダーとして、業界人全体のブラッシュアップ、底上げを担う人材である宅建マイスターの役割の一つとして、全営業職を有資格者にする=宅建アソシエイトの普及活動に参加していただくことを提案します。具体的には、現在のアソシエイト制度における第1ステップの初任従業者研修の修了者に加え、宅建マイスターによる講習会の修了者にも第2ステップ以降に進む資格を付与することとし、広く全国に普及するものとします。
もちろん、現在の初任従業者研修修了者と併せ質の担保を考慮し、後述の行動規範、行動宣言の遵守を徹底させること等が必要と考えます。
ところで、宅建士の知識。能力のブラッシュアップの機会として、法定講習がありますが、その講師の選定基準の中に「宅建マイスター」が明記されております。現にどれくらいの宅建マイスターが任用されているのでしょうか。実績を検証し、その促進策を実施するべきと考えます。
また、宅建マイスター・フェローに対しては、法定講習テキストの編集に関するヒアリングを行い、より現場に即したテキストとしていくことも提案します。
さらに、後述する行動規範、行動宣言およびそれらを実効性の高いものとするための
営業実務基準(宅建マイスター等業界挙げての共同作業での策定が最善と考えます)を策定し法定講習テキストに明記して、浸透を図ることを提案します。
なお宅建マイスターに関しては、昨今の自然災害に対する予防的行政の補助業務にもそのリスク察知能力を活かせると思いますので、空き家対策における公認不動産コンサルティングマスターと同様の活用を提案いたします。
3.上記1、2を担保するものとしての行動規範、行動宣言
不動産流通業界の社会における信頼感が向上しない大きな原因は、営業行為に対する
不信感です。業法順守・知識研鑽や仲介インフラの整備の面ではこの数十年で大いに充実してきましたが、営業行為に関しては、特に依頼者である一般消費者に対して、どのような規範・立場に基づいて業務を行ってくれるのかが曖昧であることが、信頼感が向上しない最大の原因といえます。
行動宣言
1.私たちは、依頼者利益のために最善を尽くし、依頼者の不利益となる行動はいたしません。
2.私たちは、真実のみを依頼者に伝え、情報の誇張や不正確な伝達、リスクや不利益情報の隠蔽はいたしません。
3.私たちは、依頼者の意思決定に必要な情報に関しては、依頼者が十分納得するように説明を尽くします。
この宣言は、依頼者、一般消費者に対するものであり、業界に対する不信感を払拭してゆく先鞭として、宅建士の模範である公認不動産コンサルティングマスターおよび宅建マイスターが自らを律していくものです。
また、この宣言は次に揚げる行動規範の抜粋という形をとっています。
行動規範
前文 私たち公認 不動産コンサルティングマスター(宅建マイスター)は国民の重要な財産である不動産の取引を、依頼者にとって安全かつ最善最適な取引となるよう専門家としての知識・倫理に基づき全力を尽くすことを使命とします。
1.私たちは依頼者利益のために全力を尽くし、依頼者の不利益となる行動はいたしません。
2.私たちは、真実のみを依頼者に伝え、情報の誇張や不正確な伝達、リスクや不利益情報の隠蔽、推測で業務を進めることはいたしません。
3.私たちは、利益相反に関し適切な管理を行い、依頼者に報告いたします。
4.私たちは、業務で知った依頼者にとって重要な情報は、過不足なく速やかに依頼者に報告いたします。
5.私たちは、依頼者の意思決定に必要な情報に関して依頼者が十分納得するように説明を尽くします。
6.私たちは、宅地建物取引業法をはじめとする関係法令や業界諸規則を遵守し、コンプライアンスを体現し続けることを誓約します。
注・それぞれの「行動規範」として共通である。
各資格者が遵守すべき貴センター策定の倫理規程と重複する点がありますが、性格として倫理規程は内部に、行動規範は対外的にアピールするものといえます。
行動規範を実効性の高いものとするためには営業実務基準を策定する必要があります。これは前述の通り、両資格者を頂点として、宅建士、宅建アソシエイト、さらには
無資格者をも含む、依頼者と対峙する全てのプレイヤーが準拠すべき基準ですので、より具体的なものとして業界全体で策定し、浸透させるべきものと考えます。
4.外部人材の活用
貴センター職員の高齢化、新陳代謝の停滞から、新規事業の発想、意欲等が衰えることを危惧しております。公認 不動産コンサルティングマスターおよび 宅建マイスターは、業界人の中でも先端を走るプレイヤーであり、情報収集やブラッシュアップにおいても貪欲な方々と思われます。常に時代を見据えた方向性の策定と資格者を満足させるコンテンツや事業を提供していくことが必要です。
一例としては、DXにより非効率的な業務の改善が挙げられます。
また、賃貸分野におけるブラッシュアップもますます必要となっています。
そのためには、採用活動以外にも、外部の人材を大いに活用するべきと考えます。
特に「方向性の策定」「事業企画」「構築・運営」「デザイン・PR」は重要と思われます。
5.総合資格の認定を
和歌山県宅地建物取引協会や岡山県宅地建物取引業協会が実施しているエキスパート資格制度等をヒントに、公認 不動産コンサルティングマスター、宅建マイスターの両資格に加え、どの業界団体も納得できる資格を取得した者を総合資格取得者として認定する制度の創設を働きかけ、全国ベースでの浸透を図ることを提案します。
6.不動産流通プロフェッショナル協会が目指すもの
最後に、私たち一般社団法人不動産流通プロフェッショナル協会が目指すものについて述べさせていただきます。
まず、私たちは、プロフェッショナルを次のように定義しております。
① 貴センターが認定する公認不動産コンサルティングマスターおよび宅建マイスターの有資格者とそれと同等の能力・資質と姿勢を持つ者
② 最新の知識や広い視野における知見を得るための不断の努力を重ねていること
③ 法令順守はもとより、職業倫理、クライアントファーストの姿勢と言動を持ち 業界内外、地域社会において信頼されていること
④ もって、複雑な案件、高付加価値な事業の仕組みについて、アッパーな依頼者、組織から、取引やコンサルティングの依頼を受ける人材。
私たちは、このような人物像を増やし、浸透させていくことをもって、不動産流通業界を信頼される業界にしていくことを目的としています。そのためには、会員自らが、プロフェッショナルでなければならないと日々、研鑽しております。
もちろん、今回の提案にもありました通り、地域貢献的な役割は重要ですので、両資格を社会的に認知させていく上でも、全面的に協力していく所存でありますが、不動産流通業界の社会的存在感を向上させるための協会会員像といたしましては、以上の通りです。
以上、提言とさせていただきます。
令和6年11月6日
一般社団法人 不動産流通プロフェッショナル協会
代表理事 真鍋 茂彦