協会からの提言(令和5年8月21日)

令和5年8月21日、公益財団法人不動産流通推進センター 副理事長 田尻 直人様

当協会からの提言を手渡しました。

本提言は、当協会が公益財団法人 不動産流通推進センターに対して行う形をとります。

不動産流通推進センターに対するFRP提言

私たち一般社団法人不動産流通プロフェッショナル協会(以下「FRP」という)は、貴センターが認定した公認 不動産コンサルティングマスターと宅建マイスターの有資格者を会員とした団体であり、貴センターへの提言により不動産流通業従業者の啓発と育成に寄与し、不動産流通業界を更に正しく発展させる一助となることを目的としている。本提言はその理念に基づき行うものである。


1.行動宣言と行動規範・営業実務基準

不動産流通業界を俯瞰すると、業務精度や行き過ぎた営業行為・利益相反等の課題に対し、業法順守・知識研鑽や仲介インフラの整備への取組みについては充実しているものの、一般消費者が不信感を抱きやすい営業行為に関しては未だ改革の途上にあるとの感が拭えない。中でも依頼者である一般消費者に対して、どのような規範・立場に基づいて業務を行ってくれるのかが曖昧であり、信頼感が向上しない原因の一つと思われる。

そこでまずは、宅建士の模範である公認 不動産コンサルティングマスター及び宅建マイスターが「行動宣言」を打ち出すことを施策として提案したい。これは、依頼者、一般消費者に対する宣言であり、自らを律していくことで、業界に対する不信感を払拭してゆく先鞭となるものである。そして将来的にはこの宣言が、全ての不動産流通プレイヤーに浸透し、行動の基準となることで、不動産流通業界の信頼を一層高めることになると期待するものである。


行動宣言

 1.私たちは、依頼者利益のために最善を尽くし、依頼者の不利益となる行動はいたしません。

 2.私たちは、真実のみを依頼者に伝え、情報の誇張や不正確な伝達、リスクや不利益情報の隠蔽はいたしません。

 3.私たちは、依頼者の意思決定に必要な情報に関しては、依頼者が十分納得するように説明を尽くします。

*依頼者に直接アピールできるよう「名刺」や「プレート」等のツールを活用する。

*この行動宣言は次のような「行動規範」の抜粋という形をとる。


行動規範

前文 私たち公認 不動産コンサルティングマスター(宅建マイスター・注)は国民の重要な財産である不動産の取引を、依頼者にとって安全かつ最善最適な取引となるよう専門家としての知識・倫理に基づき全力を尽くすことを使命とします。

 1.私たちは依頼者利益のために全力を尽くし、依頼者の不利益となる行動はいたしません。

 2.私たちは、真実のみを依頼者に伝え、情報の誇張や不正確な伝達、リスクや不利益情報の隠蔽、推測で業務を進めることはいたしません。

 3.私たちは、利益相反に関し適切な管理を行い、依頼者に報告いたします。

 4.私たちは、業務で知った依頼者にとって重要な情報は、過不足なく速やかに依頼者に報告いたします。

 5.私たちは、依頼者の意思決定に必要な情報に関して依頼者が十分納得するように説明を尽くします。

 6.私たちは、業法等コンプライアンス事項および業界諸規則を遵守し、コンプライアンスを体現し続けることを誓約いたします。

 注・それぞれの「行動規範」として共通である。

*この「行動規範」は、詳細についてさらに検討が必要と思われるので継続して議論を重ねたい。

*各資格者の倫理規程との重複等の整理は必要だが、倫理規定は内部に、行動規範は対外的にアピールするものである。


営業実務基準

なお、「行動規範」を更に実効性の高いものとするためには「営業実務基準」を策定する必要がある。

例えば

*資格者は、利害関係人(取引業者を含む)との取引は取引価格の妥当性を含め十分な説明をし、依頼者と資格者の所属する会社の書面による同意を必要とする。

*資格者は、取引の関係業者や周辺の関連業者から不当な金銭的対価を得てはならない。

このような具体的営業実務基準は、両資格者を頂点として、宅建士、宅建アソシエイトさらには無資格者を対象に依頼者と対峙するすべてのプレイヤーに該当する基準であると考える。FRPとしては、このような基準を浸透させ貴センターをはじめ業界全体による全営業従業者向けのものとなるよう運動を行っていきたい。


2.宅建アソシエイトの浸透を本格的に行うべき

最終的には、少なくとも売買仲介においては無資格者を無くすべきと思われる。そのためには「宅建アソシエイト」をより浸透させるべく

次の2点を提案する。

①「宅建マイスター」主催の講義をアソシエイト認定講座とする

*現在のアソシエイト資格取得ステップは、負荷が高く浸透の足かせになっているが、ある程度、講習資格と割り切って、宅建士を指導する立場である「宅建マイスター」の講義(半日)を修了した者には付与する(現制度との併用)ことで、全国的に浸透させる。

もちろん、講義内容、レジュメ等は貴センターの監修により質の担保を行う。「宅建マイスター」のステイタス向上にも役立つ。

➁「売買アソシエイト」と「賃貸アソシエイト」を分ける

*全ての営業プレイヤーには無資格者はいない、を目標とすると、一つの課題は賃貸営業における浸透である。そこで、売買と賃貸のアソシエイト資格を分け、賃貸はより講習資格の性格を強めるべきである。


3.「地域への責任」をコンプライアンス運動と連動させて、地域貢献表彰を

*本項目はすでに採用されるとのことで詳細は割愛

単に、地域におけるボランティア活動や、町おこし、商店街の活性化等だけでなく、商売の原点である「一つ一つの取引を、誠実に正直に」行うことで、消費者、依頼者への安心感と安全性を高めている事業者・プレイヤーも表彰する。これを手始めに、いまだに見られる「食い散らかすような仕事ぶり」「弱者を食い物にする行為」を業界から排していく流れに持っていきたいと考える。


4.なぜ「ミス」や「事故」が起きるかのデータ化

貴センター発行の「ヒヤリハット!不動産仲介トラブル事例集」は失敗事例の収集から分析・解説という有意義でニーズのある出版物となったが、この方向でのデータ分析ができないであろうか。「どういう人が」「どういう場合」「なぜ」「このような事故・ミス」を起こしてしまうのか。

各業界団体や貴センターの不動産相談及び大手各社からの情報提供などから、データ分析をしていただき、まずは両資格者への情報サービスとし、業界に浸透していただきたい。このような自浄作用のデータ化が進めば一般消費者の不信感を払拭する一助となると考える。


5.両資格者を増やす努力

公認 不動産コンサルティングマスター及び宅建マイスターが増えるということは、不動産流通業界のレベル向上に直接的につながるので、FRPとしても次回の提言では、掘り起こしていきたい。

以上


以上、提言とさせていただきます。

令和5年8月21

一般社団法人 不動産流通プロフェッショナル協会

代表理事 真鍋 茂彦